築60年の歴史のある堀川団地は、竣工当時の丁寧なしつらえを活かし大切に住み継がれてきました。長く住むからこそ、住み手によって少しずつ形を変えていく住まい――これからも、そんな堀川団地であってほしい。そんな思いを込めて、堀川DIY実験住宅は生まれました。
「賃貸住宅でもっと自由に住みたい。地域の人々と交流しながら住みたい。」
そんなわくわくするような暮らしを実現しようとするみなさんと、京都府住宅供給公社がいっしょにチャレンジする「大実験」。
西陣のものづくり精神を受け継ぎながら、現代のアーティスト、クリエイターや職人たちが集うような場となる再生をめざして、新しい住み方を試すことのできる4つの空き住戸を用意し、セルフビルドをしながらコミュニティも活性化しようとする、居住の実験を行いました。
堀川DIY実験では、まず4戸の異なるベースプランの住戸を整備しました。そのタイプ分けの尺度としたのが「面影度」です。
堀川団地は、風通しなど京都の町家のつくりを取り入れた「立体京町家」だと言われるほど興味深い建築です。その価値に現代人はどう関わったらよいかを知るために、室内のしつらえを残す割合=面影度を設定しました。
歴史の重みがあった方がより創造的にセルフビルドできると思う人から、自由な発想で新旧のバランスをとりたいという人まで、様々な住まいを実現できると考え、面影度を10%,25%,50%,75%の4段階に設定しました。
部屋一面に土間が広がるワンルームタイプ。
押入や食器棚、長押、柱など、所々にかつての住宅の「面影」を残し、アトリエやオフィスとしても使いやすい、シンプルで自由度の高いプラン。
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かつての住宅での生活の面影が残る和室1室を残したプラン。
土間+キッチンは、リビングダイニングとしても、ワークスペースやアトリエとしても使えます。生活のシーンに合わせ、使い分けがしやすいプランです。
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南側の和室と押入など、かつての「面影」が十分に残るプランです。
玄関から続く土間は自転車や植物を置いて自分の趣味を楽しんだり、ギャラリーとしても使えるセミパブリックな空間です。奥に行くほどかつての面影が残る、新旧のグラデーションを味わえるタイプです。
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玄関から奥まで続く土間と、和室2室が並ぶ、町家のようなプラン。
押入や柱・長押、配膳台など、かつての「面影」を読み解きながら、新たに自分の色を加えて住み継ぐことが期待されたプランです。
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堀川団地DIY実験について知ってもらうため、内覧会やトークイベント、セルフビルドを応援するワークショップを開催しました。
改修前の団地の見学と、オープンA・馬場氏によるリノベーションプロジェクトの紹介が行われました。
募集説明会を開催し、解体中の団地の見学と、オープンA・馬場氏によるリノベーションアイデアのレクチャーが行われました。
こんな風にDIYしたい、周りの人と交流したい、という「夢」をもった入居者を公募しました。
東京R不動産/openAで有名な馬場正尊氏をはじめ、有名アーティストが選考委員となって、素敵な夢を提案された方を「コラボレーター」として選出しました。
「こんな部屋にしたいけど、どうやってDIYしたらいい?」「DIYするときに気をつけなければいけないことは?」などの疑問・相談も設計者と公社で解決のサポートをしながら、コラボレーターの思いを形にしていきました。
2回に渡り、137号室の土壁塗り体験をしました。
講師の先生をお迎えして、参加者で壁の骨組みとなる「竹小舞」を編むことから始め、土づくりと乾燥を経て土壁を塗りました。
入居前内覧会として、住み方の提案コンペで選ばれた4名のクリエイターがDIY・住み方プランを公開しました。
平成25年春、4人のコラボレーターによる個性的な住戸が完成しました。
面影度10% |
面影度25% |
面影度50% |
面影度75% |
入居後のDIY住戸の内覧会を2部に分けて行いました。
堀川DIY実験住宅の精神は、今後の堀川団地再生事業へも継承していく予定です。
これから新しく入居される方々にも、この歴史ある堀川団地を自分らしく住み継いでもらいたいと願っています。